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西円堂

回廊が金堂と五重塔を囲む西院伽藍中心で法隆寺の北西にある三経院の左手の坂をのぼっていくと、やがて30段ほどの石段が見えてきます。

その石段の上に建っているのが、夢殿と同じ八角円堂の西円堂です。法隆寺にある正八角形の建築と言えばこの夢殿が有名です。

西円堂


禁を破って仏教を民衆に広める活動をしたことで知られる奈良時代の僧侶、行基が創建したと伝えられるここは、訪れる拝観者も少なく、法隆寺の中でも最も静かな場所。寺は外界とは別世界。

喧噪を離れて、静かにものを考える場所」という説がありますが、その意味では法隆寺の中でも最もお寺らしい場所と言えるかもしれません。

現在の堂は鎌倉時代に再建(国宝)されたものですが、堂内に安置された薬師如来は創建時のもの。
奈良時代を代表する秀作と言われます。

ここは古くから民間信仰のメッカでもありました。特に、毎年2月3日の節分に行われる鬼追式の人気は高く、多数の参詣者を集めてきました。
鬼が参詣者に燃えるたいまつを投げつける場面が鬼追式のハイライトで、たいまつの火の粉を浴びると病気にならないと言って、多くの人が進んでたいまつの下に身をさらしたといいます。

西円堂薬師如来は、法隆寺金堂の同じ薬師如来以上に強い民間信仰を集め、かつての堂内には無病息災、延命長寿を願って寄進された刀や兜、鏡などの品々が所狭しと置かれていたといわれます。

それらの品々は、現在は倉庫に保管されています。 夢殿が聖徳太子が夢を見た場であるなら、西円堂は無数の名もなき人々が夢を見た場といえるかもしれません。